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繰り返される!?脱プラの動き
Vol.146
2023年3月6日
身近なテーマ『脱プラ』
海を漂う海洋プラスチックごみやマイクロプラスチックは地球環境に対する大きな脅威となっています。私たちの暮らしの中でも「レジ袋の有料化」や「紙ストロー」の登場など、最近は『脱プラ』に関する話題が沢山登場しています。さて、今をさかのぼること20年以上前、同じように『脱発泡スチロール』が注目された時期がありました。今回のアイロップインフォメーションでは、脱プラの今を考える事を目的に当時の様子を振り返りたいと思います。
ダイオキシンと発泡スチロール
記憶されている方も多いと思いますが、当時発泡スチロールを燃やすと「ダイオキシン」が発生すると言われました。その為、とにかく発泡スチロールのごみを減らすことが盛んに議論されていました。ゴミ焼却場の周りでは猛毒のダイオキシンが検出され、その原因の一つに発泡スチロールがあるとされていたのです。
しかし、当時の情報には不十分な部分も多く、発泡スチロールを単独で燃やしてもダイオキシンの原因にならない事や、ゴミの焼却温度も発生の原因になることはあまり触れられていませでした。実際は燃焼温度を高める事で発生を防ぐことが出来たため、焼却場の設備が改良が進み燃焼温度が800~900度になり、最近ではダイオキシンの話は聞かなくなったように思います。
段ボールブロックの登場
当時、発泡スチロールの主要な用途は食品トレーや電気製品などの梱包材でした。食品トレーをゴミに出すのではなく、スーパーの店頭での回収が始まりましたが、梱包材の発泡スチロールの代替えには色々なアイデアが登場しました。まず、商品の形に添わせるように成形できるパルプモールド。原料も古紙の為、環境に優しいイメージがありました。生分解性プラスチックを発泡させたチップを小さな袋に詰めた物も登場しました。そして、段ボールを組み立てたブロックもこの時期からどんどん使用されるようになりました。
ダイオキシン問題の前にも段ボールの組立て式ブロックは存在しました。(当社含め)一部の器用な業界人は複雑な形状の組立て式段ボールブロックを設計していました。しかし、発泡スチロールの成形品は衝撃吸収能力を計算することが可能でしたが、段ボールには計算することが出来ないという大きな壁がありました。その為、商品の形に合わせた段ボールのブロックを作ることは可能でしたが、落下試験で商品が壊れないようにするため、設計者は苦労していました。段ボールの材質を変える、目方向を変える、などなど。現在でも計算では出来ない為、過去の経験やノウハウに頼った設計になっています。(当時、スリーブの巻き方で緩衝能力をコントロールする、パルプモールドに一定のパターンで突起を作るなどJPIの「包装技術」に論文が掲載されるほど、みんなが一生懸命研究していました)
もちろん課題は設計だけではありませんでした。発泡スチロールは金型で成型された段階で形に仕上がっていますが、段ボールは抜き木型で加工してから組立て工程が発生するため、基本的には価格がアップすることになりました。その為、採用されるまでに時間がかかることも多かったように思います。
そして現在
あれから20年以上たち、段ボール組立てブロックは普及しました。発泡スチロールの成形用金型に比べると段ボールの抜き木型は安価というメリットがあり、日本の製造業の多品種少量化の動きにあっていたかも。また、当時に比べると段ボール業界を取り巻く環境も大きく変わりました。例えばCAD-CAMの登場で、複雑な段ボールブロックの試作がオートメーション化されました。誰でも気軽に段ボールブロックの設計が可能となり、試行錯誤も簡単に出来る環境が整ったと言えます。更に業界全体の経験値が高まり、段ボール使用量の低減、構造の簡略化による組み立て時間の低減などが進んだ事も普及の要因でしょう。
現在ではダイオキシン問題はあまり言われなく無くなりましたが、当時の関係者が知恵を出し合い、ひたむきに取組んだことで、段ボールブロックの市場は確立されました。現在の『脱プラ』の取組の中でも色々なアイデアが登場しています。これらの中に、将来発展していく商品があるかも知れませんね。
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