緩衝設計 気をつけて! 正しく理解する緩衝材の使い方

2022年8月20日

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発泡スチロールは緩衝材?

梱包を開けた時、商品と箱の間に白色のフカフカしたブロックが入っていますが、あれがいわゆる発泡スチロール。ポリスチロールというブラスチックを粒上にして蒸して加熱して作ります。割るとパラパラと白い粒が出るのは、粒を膨らませながらギュッと固めるからです。
さて、発泡スチロールと言えば衝撃を吸収するクッションという認識をされている方が多いと思いますが、実は固定材としても使用されます。適度な硬さがありながら、カット加工が容易に出来るので、隙間を埋めるブロックが簡単に作れます。また、発泡スチロールは金型を使用して色々な形に成形する事も出来ます。商品の形にくり抜かれた成形品の中に商品を入れて固定すれば、梱包作業が簡単になります。
では、発泡スチロールの成形品を見た時、それが緩衝材として使用されている場合と固定材として使用される場合を見分ける事は可能でしょうか?

【設計事例1】
上の写真のように成形された発泡スチロールのブロックは、固定材?緩衝材? 答えは最後に紹介します

見分ける為のポイント

(アイロップの設計者でも判断に困る場合もあるそうですが)見分ける為のポイントは、発泡スチロールが数値コントロールされているか、いないかを見分ける事です。「えっ成形品を作るためには当然数値化されているんでしょ」って思いますよね。それはもちろんの事なのですが、緩衝設計では、輸送時の衝撃を適度に吸収する為に、商品の重量・落下高さ・落下衝撃で生じる力・発泡スチロールの発泡倍率・(商品の)衝撃を受けることが可能な面積など様々な数字を用いて計算を行います。これが”数値コントロールされている”事になります。
緩衝材として使用される発泡スチロールの成形品は、商品の形状に合わせてくり抜かれているだけでなく、箱と商品の間の距離には上記の計算結果が反映されています。

【設計事例2】
周囲が凸凹した発泡スチロールのブロックです。どのように使うのでしょうか?

上の写真のような商品の梱包に使います。(写真は商品の形状のモックアップです)

両側から商品を挟んで梱包します(サイドブロックと言われる形式です)

段ボールケースに収容した状態。きれいに収納できています。

数値コントロール=緩衝設計

それでは緩衝設計とは具体的にどのような物なのでしょうか。主な目的は輸送中に発生する落下衝撃から商品の破損を防ぐことです。(落下衝撃は地面に貨物が衝突した時に発生する力です)
商品の落下高さは、重さや大きさによってJIS規格や各メーカー独自規格に基準があり、それで決定します。基準となる高さから商品が落とされた時に、緩衝材がどの程度変形するか、また商品にはどの程度の加速度(G)が発生するかを計算することが出来ます。そこで、商品自体が耐えられる衝撃度(商品の許容加速度)が解っていると、基準になる高さから落とされた時に壊れないようにするにはどの程度の硬さの緩衝材を使えば的確に保護できるかがわかることになります。
更に落下衝撃で発生するエネルギーは緩衝材が変形して吸収しますが、これは緩衝材の面積と厚みの関係になります。同じエネルギーを吸収する場合、緩衝材の面積が広いほど薄くすることが出来ます。しかし、商品の表面にはボタンやスイッチ、或いは素材が薄くて割れやすい部分があり、全面に緩衝材が触れられない場合が多くあります。その為、商品の表面で衝撃を負荷できる部分を選び、その面積でエネルギーを吸収できるように緩衝材の厚みを算出します。薄すぎても厚すぎても商品に衝撃が伝わるのでデリケートな部分です。
因みに、落下衝撃を受けた際、緩衝材の厚みが60%程度に変形するように設計するそうです。

貨物の落下高さについては、こちらのインフォメーションで紹介しています。「今さら聞けない” 落下試験 ” 落下高さはどうやって決めているのか?ルールについて説明します」

【設計事例3】
これはかなり特殊な商品です。白い紙が貼ってあるのはプラスチックの透明カバーです。このように表面に抑える部分が無い場合はどのようにして発泡スチロールで固定するのでしょうか・・・?

その秘密は、ブロックの中に見える茶色の部分。丈夫な紙製のLアングルを差し込むことで、商品を支えるようにします。

写真のように、発泡スチロールのブロックで、商品を上下から挟み込んで梱包します。

気をつけて! 緩衝設計

ここまで書いてきた通り、緩衝設計では計算に基づいて緩衝材の形状を決めています。その為、緩衝包装した貨物の落下試験で商品が破損した場合に「あっもう少し緩衝材を増やしたらいいかな」といった安易な考え方は危険です。
まずは設計した内容を再度確認しましょう。厚みを間違った場合は薄くする必要があるかも知れません。また、緩衝材の触れている部分が実は壊れやすかったという場合は、位置を変更する必要もあります。
最後まで油断せず、商品が無事お客様に届くよう設計を行います。

【設計事例1の答え】
それでは、冒頭に紹介した発泡スチロールの成形品の結果を発表します。ジャカジャカジャカ、ジャン!正解は固定包装でした。もちろん緩衝効果はありますが、商品自体が軽くて壊れにくい様です。

ちなみに同じ商品を段ボールを使って包装したものです。同じ商品でも使用する素材が変わると包装仕様の印象が変わりますね。

今回のアイロップインフォメーションは如何だったでしょうか?包装設計の奥深さと楽しさがご理解いただけたでしょうか。「緩衝包装についてもっと知りたい」「輸送時の商品の破損で困っている」のようなお悩みのある方は、アイロップにご相談ください。

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