輸出梱包でキ(木)を付けたい話

Vol.161

2024年5月8日

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すべての木材に防疫処置が必要ではない点にキをつけたい

みなさん このようなスタンプの押された木製パレットや木箱を見たことありますか?海外へ輸出する製品の梱包に木材を使用する場合は必須と思いがちなのですがある加工された木材の場合は不要なのです。今回のメルマガは、木製パレットや木箱に使用される木材の防疫処置について紹介します

防疫処置が不要な木材にキをつけて

木材の全てが防疫の対象にはなりません。以下に示すものは対象外になります。

  • 厚みが6㎜以下の薄い木材で作られた木材こん包材
  • 接着剤や熱で貼られた合板、パーティクルボードなど
  • 製造工程で加熱処理されたワインや蒸留酒の樽 同じく製造工程で防疫処置されたタバコなど贈答用の箱
  • おが屑やかんな屑及び木毛
  • 貨物車やコンテナに恒久的に装着された木製部分(床材など)

最近の輸出梱包にポプラLVLやベトナム合板が多く使用されるのは、防疫処置が不要な為扱いやすいことが理由なんですね。
しかし、重たい製品をこん包する時のスキット(腰下)やパレットは、合板では強度不足の時があります。その為、太い(木製の)角材を使用するので、防疫処置が必要となります。

これはポプラLVLです スライスした木材を乾燥させ接着剤で貼ってから 更にプレスしながら加熱して製造します

防疫処置にキをつける

今や私たちの暮らしの中には海外で作られた多くの食品や日用雑貨、工業製品があふれています。これら輸入品が日本に入って来る時に気を付けなければいけないのが 病害虫です。過去には農作物についてきた外国の昆虫が広まったり 最近では危険な(火蟻)ヒアリが港湾地区で見つかるなどトラブルが発生しています。

当然 輸出入では病害虫が入らないよう消毒などを行う事になっていますが、木材にも虫などが住み着いている為、防疫処置が必要となるのです。
因みに通常の木材の製造工程では、生木や枯れた木の丸太を自然乾燥させてから使用する大きさにカットします。加熱などによる急速な乾燥を行うと木材が曲がったり割れたりするため、しっかり乾かしてから加工します。しかし、自然乾燥では中に住んでいる虫などは死ぬことが無くそのままこん包材として外国に送ると、送り先の国で病害虫が蔓延する可能性があります。これを防ぐため、加熱や消毒を行い、木材の中に潜む病害虫を死滅させることが防疫処置になります。

こんな虫が出てきたら怖いですね(ナイナイ・・・)

ISPM 15にキをつけよう

防疫処置は国際的な課題です。その為、2018年に世界中の約50の国と地域が参加し「国際貿易における木材こん包材の規制= ISPM15」が採択されました。
因みに序論には以下のような文書が書かれています。

範囲
この基準は、生木から作られた木材こん包材の国際貿易上の移動に伴って検疫有害動植物が侵入及び まん延するリスクを低減する植物検疫措置について記載する。この基準で対象とされる木材こん包材 はダンネージを含むが、有害動植物が存在しなくなる方法で加工された木材から作られた木材こん包 は含まない(例えば合板)。
この基準で記載される植物検疫措置は、混入する有害動植物又はその他の生物体からの継続的な保護 を提供することを目的とするものではない。 環境に関する見解
木材こん包材に付随する有害動植物は、森林保全及び生物多様性に悪影響があることが知られている。 この基準の履行は、有害動植物のまん延及びその後の悪影響を著しく低減させると考えられる。一定 の状況下若しくは全ての国にとって利用できる代替的処理がない場合又はその他の適切なこん包材を 入手できない場合は、臭化メチル処理をこの基準に含める。臭化メチルはオゾン層を破壊することが 知られている。この課題に関連して植物検疫措置としての臭化メチルの代替処理又は使用の削減に関 する IPPC の勧告(CPM、2008 年)が採択されている。より環境に配慮した代替処理が求められている

出典 横浜植物防疫所

輸出梱包に使用する木材が原因で起こる有害動植物の被害を防ぐことを目的にしているという事ですね。この規制の中には、防疫処置の方法や処置された木材への表示 使用された木材こん包材の再利用の方法など色々なことがルール化されています。冒頭のスタンプもISPM15で決められています。

病原菌の旅を防ぐことが必要です

防疫処置の種類にキをつけて

処置の種類については「木材こん包に関連する承認された処理」として4種類が定められています

樹皮について

使用する木材の表面に付着している樹皮は、幅3センチ未満であること 個々の樹皮片の表面積の合計が 50 ㎠未満ということが条件になるそうです。たまに皮付きの木材を見ますが 輸出には不向きかなと思います

熱処理

  • 蒸気及びキルンドライ加熱室
    加熱室技術を使用する場合は、木材の断面全体の温度が56℃以上の状態が最低30分以上続くことが基本用である。温度は木材の中心部に温度センサーを挿入し確認することになっています。
  • 誘電加熱
    マイクロウェーブを木材に照射する(いわゆる電子レンジと同じ方法) 照射時間は1分間 60℃に到達するように加熱されなくてはいけない。

薬による処理

  • 臭化メチル処理
    害虫やウイルスなど多くの病害虫に安定した効果を発揮する農薬です。木材の防疫処置にも使用されます。ガスが一定の濃度以上の部屋に木材を24時間 置いておく必要があります。
  • フッ化スルフリル処理
    臭化メチル同様に農薬であり、ガスの入った部屋に24時間から48時間木材を置いて薬が浸透することを確認しなくてはならない。
木材をしっかり加熱して防疫処理を行います(汗はかきませんね)

マークと運用方法にキをつけて

こん包用木材として承認を受けた方法で防疫処置を行ったことを示すマークが冒頭の写真のものになります

図で示すと上のものです。4つの要素でできているので順番に見ていきましょう

  • シンボル
    弓矢の羽?麦の穂?のようなデザインです。条件としては酷似していることと左側にあることだそうです
  • 国コード(XXの部分)
    国際標準化機構(ISO)の二文字の国コードです
  • 生産者/処理実施者コード(000の部分)
    マークを適用する木材こん包材の生産者若しくは処理実施者、又はその他の点で NPPO に責任を負う事業者に対して NPPO から割り当てられる独自のコード。尚、国コードとはー(ハイフン)で区切られている必要があります
  • 処理コード(YYの部分)
    防疫処置の種類です
    HT・・・熱処理
    DH・・・誘電加熱
    MB・・・臭化メチル
    SF・・・フッ化スルフリル
    これは上記2つのコードとは別の行に表示するか、ハイフンで区切る必要があるそうです
  • 注意点
    さらに、このマークは見える場所に判別できる大きさで印字される必要がある。手書きNG 赤やオレンジなど危険ラベルに使用する色はNGなど注意事項も色々ある

更に奥深い木材の世界

ここまで紹介てきた内容でも結構なボリュームですが、更に輸入されてきたこん包用木材の再利用方法や処分方法などもルールが決まっています。病害虫の国際的な蔓延を防ぐことは、物流に携わるモノにとっては気をつけたいポイントですね。

​今回のメルマガアイロップ通信はいかがだったでしょうか?今回紹介したような防疫処置が煩雑なため、ダンボールやスチール製の荷姿を採用されるお客様が多くいらっしゃいます。弊社では、防疫処置の必要が無く丈夫な、組み立て式合板箱などもお客様に提供しています。興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

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